Wordの設定について,いくつかの覚書き

久しぶりにWordの設定でひどい目に遭ったので,備忘として記録しておく。

 

1 はじめに

Wordの文書設定構造は,「原則ー例外」の組み合わせである。

そのため,「原則部分のフォントサイズ」が違っても,「例外部分のフォントサイズ」で合わせて見てくれを繕うことができてしまう。

もっとも,別のところでは「原則部分のフォントサイズ」を参照にすることが多いので,そこの辻褄を合わせるためにさらに別の設定もいじって…を繰り返し,伏魔殿みたいな文書設定ができあがってしまうのである。

今回ひもとくことができたのは,そんな伏魔殿のごく一部である。

 

2 はじまりはフォントサイズ

非常によく似た文書を2通(A,Bとしよう)作成するように指示された。2通は非常に似通っているが,細かいところで違いがあり,ある文章が付け足されていたり,逆にある言葉が削除されていたりしている文書である。双方とも,タイトル16pt,本文12pt,ごく一部で10ptが使われていた。

原稿として,Aの前半・Aの後半,Bの前半・Bの後半を渡されたが,「同じような修正を2回もするのは嫌だな」と思った私は,まずAの文章を仕上げた。そして,Bの前半文書のタイトルより後の部分全て削り,Aの文章のタイトルより後の部分を全て張り付け,その後,元原稿のA/B比較をしながら,Bの前半文書だったものについて,加除訂正を加える,という手法をとることにした。

原稿のA/B比較をやってくれるAIを導入したばかりだったというのも,この手法に及んだ理由である。

難なく,というにはやや文書のボリュームが大きいものであったが,まあ仕上げることはできた。ただ,この時点の作業は機械的に行っていたため,削除したB原稿のフォントについては,全く気にとめていなかった。

 

3 「文書Bが10ptになってるぞ」「え?最初からじゃないすか」「元は12ptじゃ!」

小見出しどおりの会話が上司となされる。確かに,もらったA前半・A後半,B前半・B後半とも12ptになっている。しかしフォントサイズを意識的にいじった記憶はない。はて,何か間違ったことをしたのだろうか…

フォントサイズと,あとココとココ直しておいて,という指示が飛ぶ。

 

4 なんだか変なインデント

何か納得いかないが,とりあえず,全文書を選択して12ptに修正し,その後タイトルを16ptに変更,A文書で10ptになっているところを参照しつつB文書でも当該部分を10ptに修正。

そのほかの指示内容の一つに,インデントの調整があったので,そっちも修正する。

残念ながら上司は,行頭スペースとインデントの区別がつかず,「行末改行・行頭スペース」なる技を練り込んだ文章の清書を指示してくる輩なので,清書する側は面倒くさいったらありゃしない。(それでも最近は中央ぞろえで行頭行末のスペースを削除できることを知って楽になった)

その作業をしていて,ふと違和感に気づいた。

「ルーラーとずれてる…?」

左インデント1文字+字下げ1文字を行ったとき,左インデントはルーラーの1のところにある(ように見えた)が,字下げ部分のインデントがルーラーの2よりも少し多い位置にあるように見えたのだ。

かといって,1文字分より多い字下げがされているのかというと,そうでもない。実際の文章では,きっちり1文字分の字下げがなされている。

300%くらいに拡大して観察すると,1文字目の部分からしてルーラーでは1字よりちょっと多いらしい。

こういうのは解決しておかないと気持ちが悪い。

 

5 なんかもうぐちゃぐちゃ

手始めに,グリッド線を引いてみる。

「なんだこりゃ…」

ぐちゃぐちゃではないか。全く文字とグリッド線が合ってない。

タブでどれくらい間隔が空くか調べてみる。

「1.2字…?」

こんな中途半端な設定,見たことがない。

ページ設定から文字数と行数を見てみる。普通の文書同様に,「文字数行数を指定」だ。特におかしいところは…あった。字送りが10ptになっている。そういや,A文書のページ設定を見たときは,文字数37の字送り12ptだったな,と思い出して,何も考えず字送りを12ptに設定した。

このとき違和感を覚えるべきだったのだ。文字サイズが12ptで字送りが真実10ptなら,文字同士が重なってしまうことに。

そうやって字送りを調整した後文書を見ると…

一行の文字数が31文字になっていた。

うわぁ,どうしようコレ。

 

6 解決は「偶然」

この時点で,何が起こっているのかさっぱり分からない。あれこれ試しているうちに,偶然,ホームタブのフォント設定にたどり着いた。

「…10pt?」

そう,ホームタブのフォント設定を見ると,サイズが10ptになっているのである。

これを見た瞬間,1.2字の謎がとけた。段落タブのインデントは,基本設定のフォントサイズを参照するのだ。だから,左インデント1字=10pt×1.2=12ptの文章で見るとちょうど1字分のインデントが設定されていたのだ。

ずれて見えた理由は,ルーラーが基本設定のフォントサイズの文字幅で表示しているからだ。12pt幅×2字=10pt幅×2.4字分,である(おそらく)

字送りもそうだ。基本設定のフォントサイズが10ptなので,その場合に字送りを10ptにした場合のスペース(要するにゼロ)が,文字と文字の間のスペースになるわけだ。どうりで10ptで字間ぴったりで,12pt(字間0.2字)にするとスカスカになって31文字になるわけだ。

というわけで,ホームタブのフォントが基本設定として色々なところに反映されている,という話でした。